寄付講座

分子神経治療学寄附講座

1.スタッフ(平成27年度)

特任教授 中根 俊成

 

2.講座の特徴、診療内容

当講座は2013年に発足した。免疫性神経疾患の病態と治療に関連した研究とその臨床応用、当該分野の若い専門医や研究者の養成と教育機会の提供を目的としており、前任である前田寧先生は自己免疫性脳炎、特に抗NMDA受容体抗体陽性となる脳炎の診断と治療に関する研究に専念され、抗体測定系の樹立がなされた。その後を受けて、やはり神経疾患における自己抗体測定系の確立と探索、さらには自己抗体が介在する神経疾患の病態解明を進めることを本講座の研究の基本方針としている。基礎研究と、それから得られた知見の臨床への導入、すなわち実験ベンチからベッドサイドに渡る幅広いトランスレーショナル・メディスンを実施する特徴を有する。

 

3.診療体制・診療実績

現在、特任教授1名と、神経内科医師の協力のもと、西病棟4階と5階にて診療をおこない、免疫グロブリンを用いた慢性炎症性脱髄性多発神経炎に対する第3相試験等の治験を行っている。

抗体介在性の神経免疫疾患はすでに疾患として著名なもの、歴史を有するものから最近までその存在を知られていなかったものなど多種多様である。熊本大学神経内科ではこれまでに自己免疫性脳炎・脳症における抗NMDA受容体抗体、自己免疫性自律神経節障害における抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体、封入体筋炎における抗NT5C1A抗体の測定を行っており、中枢、末梢神経系の自己免疫疾患を幅広く診断するために熊本県内は元より全国より血清検体の送付を受け付けている。このような活動により、診断を受けた患者が治療につながるケースも増えつつあり、質の高い臨床・研究活動を推進している。自己抗体陽性症例については、当科にて免疫グロブリンを始めとする集中的な免疫治療を実施している。

外来においては神経免疫疾患、変性疾患、骨格筋疾患を中心に診療している。

 

4.高度先進的な医療の取組

これまでの神経疾患の診断・治療の枠組みを超え、大学病院であるからこそ可能である他診療科(産科、婦人科、小児科)との協力を推進し、集学的医療・高度先進医療を行っている。

当講座では平成25年度より取り組んだ各種自己抗体の即時診断を常に実施し、免疫治療に関しては集中治療部との連携のもとですすめている。血液浄化療法(血漿交換、免疫吸着)、免疫グロブリン大量投与、ステロイドパルス治療を積極的に行い、不良な生命・機能予後を格段に減らすことに成功した。

 

5.研究活動

抗NMDA受容体抗体の迅速検出を可能にし、更に定量的抗体測定系を確立している。この定性的・定量的測定系を臨床現場に導入したことで、早期診断・早期治療が可能となっているだけでなく、男性例が少なからず存在することや、その場合の神経症状は精神症状や不随意運動など様々であることが分かってきた。今後は、男性例が有する特徴を明らかにしてゆくと同時に、男性例の治療は何がベストであるのか検討してゆく。

抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体陽性の自律神経障害症例では中枢神経症状や内分泌障害、さらには膠原病や腫瘍との併存例も明らかになりつつあり、これらの病像にアプローチするために他のニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットに対する自己抗体の検出についても研究を進めている。

 

6.医療人教育の取組

医学部教育では、医学部4年生の神経内科学系統講義にて、神経免疫疾患等を担当している。また臨床実習では4~5年生時のポリクリ、6年生時のクリニカルクラークシップにて臨床指導を行っている。大学院教育では「パーキンソン病の最新の治療について」を担当し、最新の神経治療学に関して、留学生を含む博士課程院生に紹介している。また博士課程院生と修士課程院生と共に日頃より実験・研究指導を行っている。卒後初期研修・後期研修では、日本神経学会より指導医として、神経疾患全般に対する理解を深めるべく指導し、学会発表などの指導を実践している。

 

7.地域医療への貢献

熊本医療センター、熊本赤十字病院などの神経内科医より依頼される神経免疫疾患自己抗体検索を連携して多数実施している。臨床像解析をベースにした基礎的な検討を進めつつあり、各病院の持つ特性を考慮した地域全体でトランスレーショナル・メディスンを推進する研究・診療を展開している。

Copyright© Department of Neurology, Graduate School of Medical Sciences, Kumamoto University.